オレの能力は特異な遠距離パワー型。
スタンドを発動していれば意識は息子の教育に向くから、周りに対してははっきり言って注意が向かなくなるといってもいい。
そんなオレのことを危惧したリーダーは、任務の際に護衛なんて大層なものをつけてくれるようになった。
相手は大概プロシュートだった。
任務中に敵から襲われるようなことがあれば彼はオレを助けてくれただろうが、生憎そんなことは一度として起こらなかった。
だからプロシュートのもっぱらの仕事は任務を終えた帰り道、オレとお喋りをしてくれることだった。
そんな間にチームのメンバーは増えて任務も増えていく。
オレのお守りなんて余計な仕事をする暇があれば、自分の任務をこなしたほうがいいに決まってる。
だからオレは自分からリーダーに「一人で大丈夫だよ」と言った。
プロシュートはギアッチョが入ってきた頃には彼にスタンドの使い方を特訓し、ペッシが入ってからは彼の教育係になった。
オレの側を離れてしまい、他のメンバーに付きっ切りになってしまったプロシュートを、オレはとても複雑な想いで見つめていた。
それは、体験したことはないけれど、母親を弟妹に取られたような気持ちだったのかもしれない。
「……何でオレのベッドにいる?」
「シーツ洗ったら乾かなかった」
プロシュートはため息まじりに自室の扉を閉めた。
メローネが横になって寛いでいるベッドまで来ると腰を下ろしてまた一つ息を吐く。
「……今夜、一緒に寝てもいい?」
「あ?」
「今夜だけ。安心しろよ、別に何もしたりしない」
「当然だ」
言いながらプロシュートは靴を脱いでベッドに横になる。
メローネがいたせいか、自分のベッドなのにいつもと違う香りを感じた気がした。
プロシュートがすっかり横になると、すかさずメローネが彼の首元に顔を埋めて抱きついてきた。
「お、おい……」
「帰ってきたらキスしてくれよ」
「あ?」
「明日が終わったら、オレにキスをしてくれ」
メローネは少しプロシュートから離れて彼を見返す。
その瞳を、プロシュートは見つめていた。
そしてメローネの頭に手を添えると自分のほうへと抱き寄せる。
「まーオレが出ていくまでもねぇと思うが、その時はおまえに好きなだけくれてやるよ」
「約束だからな」
「わかってる」
そう言ったプロシュートの声は優しかった。
彼の優しさにずっと触れていたいと思ったそれは、きっと子供染みた独占欲。
そう、だってあれは、そんな感情ではなかったはずなのだから。
「約束……したのに……」
メローネは自分の足元に転がる遺骸に声をかけた。
「はじめてあんたに……キスしてもらえるんだと思ったのに……」
彼を失い訪れた喪失感は、今までに感じたことのなかったもの。
メローネはしゃがみ込み、プロシュートの頬に指先で触れた。
「プロシュート……ッ!」
愛を知らない自分が彼に抱いた感情。
それは――“恋と呼べたでしょうか”
- end -
蝶の寝床管理人の庵様より御寄稿。